リクルート哀戦士・就活戦記<前編>
もう既に、あの地獄から1年近くの時が流れようとしている。 あの地獄。それは、忘れもしない一連の就職活動、略して「就活」のことである。 03年1月現在、自分の経験からこれからその戦場に出向こうとする学生の何かのお役に立てればと思い、 あくまで内定者という肩書きの一学生であって、社会人ではない、 「今」の僕でしか書けないであろう、体験記とその持論を書き残そうと思う。
就活戦争前夜 就職活動とは、その名の通り「職」に「就く」ために行う活動である。 だが、僕の解釈は少々違った。 「社会人になるための活動」と捉えていたのだ。自分の個人的な事情ではあるが、「フリーター」という選択肢を選ぶわけにはいかなかった。 そりゃあ親がうるさかった、ということも否定はしないが、 何より僕自身がそれになりたくなかった。 そう思う原因はいくらでもあるのだが、理由に関してはただそれだけである。 無論、そう考えた分だけ比較的早い時期から動いていた。 大学2年の時は一応興味ある分野の就職部主催のセミナーを受けにいったし、 2年生向けの就職適性検査も受けた。 そういう意味では、企業研究や自己分析等の具体的活動は行っていなかったにせよ、 意識だけは発展性のある方向だったように思う。 とりあえず資格取得に関してはてんで疎く、「そんなもんいらねーよ」と割り切りすぎていた部分以外は、 結構マシな学生であった、といえそうな気がする。
偵察 個人的な前置きはこのぐらいにして、そろそろ具体的な就活の内容に入ろうと思う。 「偵察」と題していいような気がするのは「エントリー」であった。 まずはとにかくこのエントリーをせねば始まらない。 基本的には企業のHPへ行ったり、リクナビ等の就活用HPから行うのがこのエントリー。 その名の通り、企業側にこちらの「御社を受けたい」という意思を表明するだけでなく、 実際には企業側のデータ集め、と考えるのが妥当らしい。 エントリーに際し、企業によっては自己アピールやその他履歴書に書きそうな文の記入を要求されるが、 考え直してみればほとんど予行演習程度で何の意味もない、などと不届きなことを今に至っては思う。 僕がエントリーを本格的に始めたのは01年も終わり、02年に入ったお正月からだった。 その際にバカバカしいことで焦った記憶がある。 『今年の当社の求人活動は終了しました』 まあ多分更新を忘れてそうなってんだか、焦って「今年度」等の表記を見落としていたかのどちらなのだろうが、 これには正直、焦った。 実際3年生が活動を始めるのが秋から冬だと言われていた様な気がするが、 その上の学年である4年生も活動が終わっているわけではなかったりするあたり、就職活動の開始時期の早期化と、 その難しさを再確認した経験である。
前哨戦 次に僕の場合3年生の後期テストが終わってから、つまり春休みになってからが、この前哨戦であった。 主に「合同企業セミナー」といわれるシロモノで、基本的にはここでどんな企業があるのかを知る、といった使い方をした。 実際の話、就活する以前では所詮自分の知っている「会社」なんて、超有名企業ばかり。 それはCMや広告だったり、身近にある地元企業だったり、要は氷山の一角しか知らない。という表現になる。 そんなわけで、この前哨戦はこちら側が海面下に埋まっている企業を知るのに最適なイベントである。 逆に言えば前哨戦を踏まずにいきなり次の「侵攻」に移った学生は、 その海面下を知らぬが故に、見識を狭め、結果的に自分の首を絞めることになっていた。 会社側にとっては、「プレ説明会」。前哨戦とはいえ、相手の様子を探る戦いという意義があり、 『今年はこんな子がいたな』というインプレッションに直結するものらしい。 そして、それによってその年の出方の戦略が、この時点で大方出来上がるようなのだ。 そういう意味で、己を売り込むためではなく、あくまで情報を得るための段階。そう考えるのが妥当であろう。 ちなみにここで新たに興味の沸く企業と出会った場合、すぐさま偵察行動に戻るべきだ。 遅くはない。まだ十分すぎるほど間に合う。そのための合同企業展なのだから。 僕個人のこの段階でのポイントは、 ・いかにたくさんの有用な合同企業展に参加するか ・その中で自分の琴線に触れる企業をいくつ見つけ出すことが出来るか 以上二点だと考える。 だが、それもあくまで理想論。僕個人の実際は、一回の企業展で一社見つかれば収穫だったのである。逆に言えば自分の感性に合う企業を見つけることがいかに難しいか、ということを実感した次第である。 侵攻 いよいよ就活戦争も本番の様相を呈してくるこの時期。 侵攻と題した「説明会」である。以前の合同のものとは違い、個別に企業が行うものである。 実際、我々がスーツという鎧装束に身を包み、単身乗り込む。 それでいてまだまだ選択権というか、態勢的優位は我々が保っている。そういう意味も含めて侵攻、である。 この侵攻の際、もっとも神経を尖らせるべきは「その企業についてもっと知りたい」、 という己の欲求を導き出すことであろう。 それが出来ない場合、もしくは無理して知識を押し込んだ場合、著しくヤル気というか、 その企業そのものに対する興味が薄れてしまうのではないだろうか。 しかしながら前述の欲求を素直に引き出してくれるような人事の方も、世の中にはいらっしゃるものだ。 一言で言えば「自分が気に入った担当者」ということになると思う。 実際企業側もそういう魅力的な人でないと人事は勤まらない、 という話を就職部から聞いた経験があるので、 そういった直感的なものこそ、実はアテにしてもいいのではないだろうか。 僕個人の経験談だが、そういう魅力的な人事さんの会社は本当に魅力的に映った。断じて誇張ではない。 とりあえず、この段階でよく「質問の際に目立て」など言われたりもするが、 別にそんなことは無理をしてする必要はないだろう。 企業にとっては、あくまで「侵攻」させてくれているだけなのだから。 余談ではあるが、この時期のピークそのものが地域や企業によってバラつきがあるため、 この時点でのスタートが早ければ早いほど、そこの内定が早く出る傾向が強いことを付記しておく。小規模戦闘 侵攻し続けてみれば、次は敵軍との衝突。しかし規模は小さい。 そんな程度の表現が似合いそうなのが「筆記試験」である。 企業によっては、経費削減のため最後にあったりもするところもあるらしいのだが、 僕の経験では、ほとんどがこの段階にあったのでここにて書く。基本的に就活における筆記試験はそう難しくない。 いわゆる「落とすための試験」であるにも関わらず、突破の可能性は高いといえる。 なぜならばここ数年、企業側は「人間的に優れた人材を求む」傾向が強く、それは筆記試験では判断し難いため。 そういう考え方ならば、そうたいした猛勉強はしなくてもいいことになるが、 全く問題が分からない、なんていう輩は落ちるであろう。 一応は試験。学力の最低ラインを引くため、基準ラインを引くためのテストであることを忘れてはならない。 その他、超有名企業、人気企業等の高倍率企業はテストが難しい。当たり前である。落として絞り込む試験なのだから。 さて、小難しい講釈はこのくらいにしておいて、具体策を講じよう。 結局のところ、自分のレベルに相応しい企業をまわっていた僕は、 自身の中学生程度の知識で問題なく通過できた。 完全にド忘れさえしていなければ、前日に軽く見直しておけば、それで済む程度。 要は最低限の一般教養レベルが身についていればそれで良いのだ。 大学就職部が講師を務める「筆記試験対策講座」には参加しなくて正解だったと思う。あと、その会社についての問題が出る場合もあるので、パンフ等で確認しておくのが吉であろう。 余談だが、ほとんど全く同じ問題が、他の企業で出題されたことがあった。 どうやら大学受験で言う予備校に問題を作らせて買い取る、みたいなことが企業間でもあるらしい。 実際に僕が経験しただけでなく、さらに他の企業でも使われていたらしいので、 復習、特に漢字の読み仮名など分からなくてミスったような問題は調べられるなら調べて糧にするべきであろう。 とにかく、ここで落ちたら元も子もない。それだけは自覚しておいて頂きたい。 |