conquista ciela |
ある日、君は僕に言った。 僕には言えなかった、あの言葉を。 分っていた。こうなることは分っていたんだ。 だけど、僕には言葉がみつからなかった。 いや、勇気がなかっただけかもしれない。 怖かっただけかもしれない。 君の瞳を見ないで、綺麗な夕日を見て、 僕は君に返事をした。 僕と君が出かける時は、天気は決まって悪かった。 二人して雨男と雨女だねと、よく笑っていた気がする。 あの日は曇りの日だった。 雨は降らないだろうと、僕は傘を持っていかなかった。 でも、降ってきた。 夕立だった。 君が鞄から取り出した赤い折り畳み傘では、二人はとても入りきらなかった。 それでも、肩が濡れても、一緒に歩いていた。 いつからだっただろうか。 君に変化が現れたのは。会う度に、君のなにかが違う気がしていた。 全然確証はないし、そんな自信なんか持ちたくもない。 ただ、二人とも気付き始めていたんだと、今になって、思う。 いつか、またいつか君に会うことはあるんだろうか。 あるかもしれない。 無いかもしれない。 だけどね、僕はこうだったらいいなと思うことがあるんだ。 お互いに笑顔で会えたら良いね、って。 |