邪な道その5

筆でシャドウをいれてみよう


長:いよいよ今回の邪な企画の、メインだ。

  多分誰も考えもしないし、実行もしない、「筆でシャドウ」をやるぞ!

M:それって……どうスゴいの?

長:普通はね、エアブラシを使わなきゃシャドウはいれられない、というのが定説なんだな。

  まあ、実際にはパステルでもシャドウはできるんだけど、今回は今までの盲点というか、

  考案者である自分自身が言うのもなんだけど、とにかく邪道なのっ!

M:……それで、ぼくにも出来るのかなあ?

長:わからん。

  っていうか、構想はした、っていうまだまだ「理論」の状態。はっきり言って未知の領域。

M:…だ、大丈夫なのかなあ?

長:わからん。わからないからこそ、やってみようぜ!!

M:へい。(深く考えてないときのMっちゃんの返事)

長:これがラッカーによるスミイレと、パーツ全体を400番ペーパーでならしたスカートのパーツだ。

  多分、このくらいの大きなパーツの方が、シャドウは入れやすいと思うので、こいつを例にやってみよう。

  あくまで僕にとっても勉強(実験)の一環なんで、そこんとこよろしく。

M:へい。
長:まずはスミイレで使った3倍希釈を塗りこんでみよう。なぜ3倍からかというと、重く見せるためなんだけど……

  どーゆーコトだかわからんわなぁ。

M:うん。
長:今度は後ろだ。こんな感じで塗りこむ。あくまで均一ではなく、ランダムにするのがキーポイントかな。

  でも具体的な説明がものすごく難しいため、写真を参考に…としか表現できない。ちゅーわけでがんばって。

M:……(黙々と塗っている)
長:お次は5倍希釈の塗料の出番。

  でも今度は塗りこむんじゃない。ボカシをいれるんだ。さっき塗った境界線部分をぼかすんだ。

M:え?え? ど、どーゆーことなの??

長:この黄色いラインの感じで筆を動かす。それとしか表現できん。我慢してくれ。
M:ボカス?ぼかす?……こんな感じかなぁ?

長:ぼかす時は、普通の筆塗りと違って、筆を立てない。

  こんな感じで完全に面相筆を寝かせてしまった方が良いぞ。

  ちなみに筆に含ませる塗料は、結構多めに含ませた方が、溶剤分でうまくぼかせるハズ。
M:……長瀬くんの言う通りやってたら、こんなに大変なことになっちゃったんだけど……

長:大変なこと?この塗り具合がか?心配ご無用。

  これでいいんだ。これで。このぐらい豪快にやっとかないと自然な感じにはならんだろうて。
M:後ろは線が多いから、もっと大変なことになってるよぉ〜

長:いや、線が多いからこそ、シャドウが映えるはずだ。あくまでハズだけど。


長:下地がペーパーで荒らしてあるから、乾燥が早いだろ?

  ボカす際にも、その乾燥が早いことが非常に重要なので、しっかりやっておきましょう。

M:はーい。



長:さて次はシャドウを下地の成型色に馴染ませる作業だ。

  この作業で上手くやれば、ナイスなシャドウになってくれるはず。

  逆にいえばこれが上手く出来ないと、ただの小汚いだけのプラモになってしまう危険性がある。

M:うーん、ぼくに出来るかなあ?

長:出来るワケがねえ。

  まあ焦らずじっくりやんな。前例が無いんだから(笑)


長:ちゅーわけで「馴染ませる」=「拭き取り」なのでシンナーを含ませた綿棒の登場だ。

  今回はいつもと違ってたっぷり含ませた方が上手く行くはず。さっきのぼかしの作業と感覚は一緒だね。

  んで写真の通り、こんな感じでシャドウ部分を残しながら拭き取る。
長:シャドウを残す際の、残し加減は「好み」なんだけど、出来る限り均一にならないように意識して、

  成型色と5倍希釈塗料との部分の境界を馴染ませていくんだ。時間をじ〜っくりかけて根気良く何度も拭く事が大切。

M:か、かなり大変な作業だね……すぐ綿棒ダメになっちゃうし。
長:まあ、こんな感じなら「自然な感じのシャドウ」って言えるんじゃないかな。

  すげー時間掛かったけど、その分の価値はあるだろ?

M:なんか、なんかスゴイや……

長:苦労して全身のグレーと青のパーツにシャドウを入れたね。

  全体のバランスを確認するために組み上げてみよう。

M:うわぁ〜…………(絶句)

長;どーした?

M:もう、スゴイや。すごいすごい。

長:驚いているようだね(笑)

  素直でよろしい。

M:……わぁ〜(まだ眺めてる)

長:それだけ眺めてたら気づかない?

M:何が?

長:シャドウが不自然な部分さ。全体と調和して無い部分とか、見当たらない?

M:???

長:まあ、いいや。本人の意識の問題だから(笑)

  とりあえず成型色を活かしてるんだから、塗りこみや拭き取りに失敗してもすぐにやり直しが可能だ。

  全体よりシャドウが薄かったら塗りこめば良いし、濃かったらもっと拭き取れば良い。

M:本当に、めんどくさい作業だねぇ。

長:……あっ!シャドウそのものが入ってないぞ。この部分やり直し。…ここも。…ここも。

  ここの面のシャドウのバランスが悪い。ここは…もっと薄くした方が重くなり過ぎずにすむ。

  あと、細かいパーツ一切やってねえな。そういうところも全部。完璧にやりなさい。

M:ひぃぃ〜


長:でもさ、遠くから見ると、クヤシイぐらいカッコイイぜ。

M:遠く……から?

長:近くで見ると粗いってこと(笑)

  まあ、上出来じゃねーの。

M:わーいわーい!

長:しかし何だな、青部分へのシャドウはもう少し薄い色でも良かったかなぁ。

  白ぐらいは買わせとくべきだったかもしれぬ………ブツブツ



「筆でシャドウ」について注意事項
Q&ABBSにおいて、この「筆でシャドウ」についてあまりにも同じような質問が多かったので、
それを踏まえて、文章内容をあまり理解できなかった初心者の方の為に、
以下に注意事項として書き出しておこうと思います。


・成型色を活かすことが大前提である。
⇒基本塗装用の塗料を拭き取りをするためには、下地が成型色である必然性があるのです。

・下地をペーパーで荒らさないと、シャドウが染み込まない。
⇒400番か600番ペーパーでシャドウをつけるパーツの全体を荒らし・馴らして下さい。

・ラッカー系塗料でしか出来ない技法である。
⇒乾燥が速く、それでいて塗膜の強い油性塗料=ラッカー系塗料を使って行う技法です。逆に言えば水性塗料では絶対出来ない、ってこと。

・非常に難しい技法なのだから、自然なシャドウに出来なくて当然である。
⇒そもそも初心者に「簡単にはできない」ということを分からせる為の講座なので、出来なくて当然です。
  そういう「読んだ内容」=「自分の技術」には成り得ないということを分かって頂くために、この講座は存在するのですから。



とにかく、もっともっと文章をよく読んでください。そして考えてください。全部講座内に書いてあることばかりです。

続く

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